アスペルガー症候群の生徒と関わる難しさ
プロフィール: 松田旭(仮名)、21歳女性、大学生
アスペルガー症候群と診断された、当時中学3年生だった男子生徒を家庭教師として教えていました。今回は彼と彼の親御さんの許可を得てお話します。
彼、みちるくん(仮名)は、3歳頃に自閉症と診断され、学齢期になり高機能自閉症、後にアスペルガー症候群と診断がかわっていきました。彼は普段は公立の中学校(普通校)の特別支援学級に通っていました。
小学校の頃は普通級にいましたが、途中で学業の遅れを理由に支援学級(情緒級)へ移りました。情緒級と示したように、障害により知的に課題があるわけではなく、こだわりの強さや集中の困難、コミュニケーションの困難からくる2次的な学業の遅れです。
しかし支援級へ移行しても課題はありました。学業の問題、対人関係の問題、さらに担任教師の問題が大きな3つです。
学業の問題は、支援級に移り個人ケアは増えたものの、学年の交じったクラスで授業速度も普通級より遅く、受験期も大変でした。中学校の始めから、時折小学校範囲に戻り基礎から繰り返し指導しました。しかし細かいことがいちいち気になり、脱線するとなかなか戻ってこれません。
根気が必要でしたが、ぱちっと話を切ると彼も脱線に気づくようで、気づけばさっと勉強に戻れます。さりげなくうまく気づかせてあげられるとよいのだと思います。また、興味のないことはすぐ忘れてしまうので根気は必要でしたが、少しおもしろいと思わせることができると、集中力がすごいのでこっちのものでした。
対人関係の問題は、幼いころから空気が読めず、本人はみんなのところへいくものの、みんなは扱いに困っていたようです。中学校でも部活の打ち上げや遊び、ごはんなどに誘ってもらえないなどかあり、本人は自分が支援級だから以前は仲のよかった子もよそよそしいのだといいます。偏見もあるのかもしれませんが、周りはどうしたらいいかわからないのですよね。
なにより担任の先生がひとりよがりなかたで、それに保護者は困っていたようです。
学業、対人関係ともに、疲れやすく過敏なこともあり、高校受験が大問題でした。みちるくんは特別支援学校も検討していましたが、職業訓練メインの様子を見てショックを受け、普通の高校を望んでいました。なんとか高校課程の専門学校にはいりましたが、今も勉強は昔の遅れがとりもどせておらず、また放課後に友人と遊ぶなどができず寂しいようすです。
みちるくんと私は週に数回2、3時間会うだけなので、長くて焦点のわかりにくい話も一通り聞く余裕がありましたが、ご家族は生活がいちいちマイペースで、話も突然脱線してしまうみちるくんに常に冷静に向き合えるわけではありません。わかっていても、つい感情的なってしまうことがあります。
私は、みちるくんはもちろん、なるべく親御さんのお話もお悩みや愚痴も含め、話しやすい空気を作る努力をしています。そしてもしなにかお話頂けたときは、家庭教師とは直接関係なかったとしても聞くようにしています。
周囲にアスペルガー症候群の方がいる場合、例え要領の得ない話でも、確認しながらでも、できる限り丁寧に最後まで耳を傾けてほしいです。当事者はきちんと考えがあります。また、当事者家族や周りの方が身近にいる場合も、負担を理解し、可能ならケア(愚痴やなやみを聞くだけでずいぶん違います)もできるといいのではないでしょうか。
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